「急須(きゅうす)」 由来
本当に不思議である。
なぜこんな漢字を書くのでしょうね。
「急須」
全く急ぐ必要もなし、どちらかといえばお茶を飲むのはくつろぐ時だし。
大工さんにお茶を入れながら母が誰に言うともなくつぶやいた。
「どうして急須なんだろう。」
業務用のような異様な大きさの実家の急須は一度に10人以上のお茶が注げる。
そのことを屋根屋さんが興味を持って質問してきているんだけどそんなことはお構いましで母は自分の世界に入り込んでいる。
首をひねり遠くに目をやり急須の手に持つとひっくり返してみたり。
いくら凝視しても答えなんて書いてあるはずもないのに。
そんな母の眠れぬ日々に終止符を打つために今日の回はあるのかもしれない。
■「急須(きゅうす)」の由来
お茶の文化は中国から渡ってきたと考えるのが一般的。
だが中国には「急須」というものは存在しないようだ。
代わりに漢字そのままの意味を持つ「茶壷」というものがあるらしが、こちらはお茶を入れるいわゆるティーポットの役割であるとのこと。
急須らしきものは、明朝末期というから日本では江戸の最初の頃に伝わってきたという。
日本人は伝わった当初薬として飲まれていた茶を、煎じ、そのまま茶碗に注いで飲んでいた。
そのために、直接火にかける道具が必要だったらしい。
そこで、薬缶と急須を兼用した道具が必要になった。
中国南部の福建語には「キップシュ」と発音する器があるそうでこれは酒や水を温めるやかんのような道具だがそれが日本に伝わり漢字で「急焼」と書いて、中国語の読み「きびしょう」と呼ばれ用いられる。
急須のと違いはやはり、「後手」であること。
そこからのすこし時代が流れるとが茶を薬としてではなく、飲料としてたしなむ時代となる。
茶葉を入れたあとお湯を注ぎ、蒸らすための独立した道具「急須」が必要となったわけだ。
中国には名前も形も用途も、どれをとっても急須と同じものは存在しないので日本独自の変化を遂げた結果が急須なのではないかと考えられるわけ。
中国との違いはやはり「横手」であろう。
これは日本人のうるさい作法からなのだろうか。
「須」という文字は、「用」と同じ意味と考えられる。
これは「急焼」と区別するためと考えて間違いない。
どちらにしても急須のもとは中国語の「急焼 キビシャオ」からきていることは間違いない。
それが急ぐ必要もないのに「急」の字が使われている理由なのだろう。
母もこれで安心して寝られそうだ。
コタン - 2015年7月19日, 2:02 PM
すごいなぁ。
ひでちゃん - 2017年12月16日, 3:23 PM
とても楽しく興味深く読ませて頂きました。有難うございます。さて、私の知人に陶芸をされている方がおりやきもので創作した急須の取っ手を立てて(Tの字)写真と文章をブログに投稿されています。急須の由来に合わせて器の形状についても別の示唆があります。冨岡陶芸教室(勝田台陶人舎)ブログに掲載・・・ご参考まで